モノカキ支援室

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「ベタ」を書くことを恐れない

「ありがちな展開だから、ちょっとひねりを加えてみよう」
私も、しばしば執筆中にこんなことを考えます。

 

誰も読んだことの無い、斬新な展開。
多くの作家が憧れることですが、今回はその反対「ベタ」の魅力について考えてみます。

 


「ベタ」を検索したら、魚が出てきました……。

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ここでいうベタは「よくある」とか「ありがちな」とか、そっちの意味で捉えて下さればと思います。

 

「ベタ」は魅力的のあかし

この記事の結論を最初に行ってしまえば「ベタ」は魅力的だと言うことです。


ピンチになって覚醒する主人公然り、ちょっとした勘違いからすれ違ってしまう恋人たち然り、序盤のライバルと終盤で共闘然り……。


何れにせよ「使い古された展開」が何故使い古されているのかと言えば、大勢の人にとって魅力的で共感しやすいからでしょう。

 

多くの人は、ピンチになった時起死回生の一手を求めるでしょうし(そしてそれが実際かなえられた時、大きな感動を得るはずです)、ちょっとした勘違いや意思疎通の不十分から友人や恋人と疎遠になったことがあるはずです。


そんな多くの人が体験している事、多くの人が感動している事――それをなぞったものが「ベタ」な展開です。

 

大勢の人に見てもらうことを前提にしているエンターテイメント作品において、大勢の共感や理解を得ることはとても大切です。

 

良い「ベタ」悪い「ベタ」

しかし実際には同じ「ベタ」でも感動するベタと、「またか」と辟易してしまうベタがあります。

 

何が良い「ベタ」で、何が悪い「ベタ」か――。
この問題について、前項で触れた「ベタは多くの人の共感をえるものである」という視点から考えてみます。

 

ざっくり言うと

  • 良いベタ:共感できる
  • 悪いベタ:共感できない

と言うことになるはずです。

 

たとえば、

「銃で胸を打たれたと思ったが、胸ポケットに入っていた鉄製のお守りのおかげで生き延びた」というベタな展開があったとします。

 

共感できる部分は恐らく「窮地に陥ったが、運よく助かった」事に対するカタルシス(?)や、もしお守りが恋人からもらったものや、友人の形見だった場合「愛情や友情がその人を救った」という所でしょう。

 

逆に共感できない部分は「都合良く胸ポケットにお守りを入れるはずないし、弾丸がちょうどそこに当たるはずもない」と行った所でしょうか。

 

「銃で胸を打たれたと思ったが、胸ポケットに入っていた鉄製のお守りのおかげで生き延びた」


この展開を魅力的にするには、たとえば


・九死に一生な感じをより強く印象付けたり
・そのお守りを託した人物の感情や怨念を強く描写する


などの工夫が必要になると思います。そうしないと単なるご都合主義に見えてしまいますよね。

 

もうひとつ例を挙げてみましょう。

「好きな人の前では緊張して素直になれず、ツンツンしてしまう」というベタなキャラ――所謂ツンデレについて考えてみます。

 

このベタなキャラに共感できる部分は、まさしく「好きな人の前では緊張して素直になれない」という部分です。
自分が好きな人の前では素直になれずつい意地悪をしてしまったり、見栄を張ってしまったり……そう言った経験をした人は沢山いるはずです。

 

逆に共感できない部分。
よくやり玉に挙げられるのは「ツンデレだからと言って暴力はいけない」といったところでしょうか。


好きな人の前で素直になれないからと言って、つい相手を変態扱いしたり、犬扱いしたり、殴ったり、レールガンで攻撃したり――。
好きな人の前で素直になれない経験をした人は大勢いるでしょうが、だからと言って相手を傷つけようとした人はそれほど多くないでしょう。そのため、共感できる人数は相対的に減るはずです。

 

もっとも、「照れ隠しのために過剰な反応を見せたり攻撃をしたりする」というのは、漫画・アニメ・ライトノベルの世界では既に認められた(?)良くあることなので、単純に共感できる/できないで判別することは難しいのでしょうが。

 

なんても「ベタ」にすればいいというものじゃない。

ベタな展開は魅力的ですが、何でも一から十までベタにすれば良いと言うものでもないはずです。
とくに、新人賞・文学賞を狙っている作家志望にはある程度の新奇性を求められると言います。
「どの程度新しい要素を組み込めばいいか」ということに関しては、後日記事を投稿する用意がございます。

 

今回のまとめはこんな感じになります。

  1. 「ベタ」は多くの人の共感をよぶため、その意味で魅力的である。
  2. エンタメ作品において「ベタを書くこと」=「大勢の共感をえること」を恐れていはいけない

 

 

「新しい物を、新しい物を」と血眼になって探している人は、ちょっと方を抜いて、ベタな作品を書いて見るのも良いかもしません。
それでは良い執筆ライフを。