モノカキ支援室

小説、文章を書く人のための支援をするブログです。twitter:https://twitter.com/monokaki_suppor

「新しいもの」はひとつでいいんじゃない?

前回の記事の続きもの。

「斬新な作品を書きたい!」と願う作家志望は少なくないと思います。


なぜなら、その方が文学賞や新人賞に通りやすいだろうから。
でもその思いのせいで、なかなか筆が進まないと言うこともあるのではないかと思います。


斬新な作品を書きたいけど、アイディアが出てこない――
そのせいで、作家になりたいと思いながらも、作品を執筆することが出来ない、いわゆるワナビみたいな状態になってしまうのではないでしょうか。

と言う訳で、今回は「斬新な作品」を書くための、ヒント、みたいなものを提示しようと思います。

 

 

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1から10まで斬新なものはない

 

ピカソキュビズムの作品。あれは斬新っぽいですね。

ピカソ キュビズム - Google 検索

 


実際キュビズムの作品が登場した時、人々は戸惑い、反発し、様々な反応を見せました。

 

キュビズムの斬新さは、すごくてきとーにいうと「一点透視図法」を否定したという点にあります。


私たちが絵を描く時は大抵、「一つの点からみた風景」を描きます。それはカメラだったり、私たちの目だったり、とにかく、一つの点から見た風景をそのまま描いたものが「リアル」になり、そこから外れていると「なんかデッサンが狂っている」という感じになります。
それを無視して、「別に、色々な方向から見たイメージを、一つの画面におさめてもいいんじゃないか」としたのがキュビズムです。

 

しかし、ピカソの絵。よくよく見てみると、その全てが斬新と言う訳ではありません。


MoMA | The Collection | Pablo Picasso. Les Demoiselles d'Avignon. Paris, June-July 1907

たとえば、裸婦をモチーフにするというのは、美術の世界においては一般的に行われること。
画面の構成や、色使いも、西洋美術の歴史の中で洗練されてきた技術を流用しています。
四角いキャンバスに描く、というのも伝統的です。現代では丸いキャンバス、三角のキャンバスも珍しくありませんし、駅の壁に書く美術だって認められています。

 

キュビズムの作品が、「奇抜で馬鹿げた作品」ではなく「斬新な作品」として認められていったのは、おそらく、すべてが斬新だったからではなく、ほど良く一般的な部分が入っていたからだと思います。


(もし、ピカソが、駅の壁に全裸でキュビズムの絵をライブペインティングするという芸術活動を行っていたとしたら、たぶん逮捕されるか病院に運び込まれていたでしょう。その絵画は芸術としてなかなか受け入れられなかっただろうとおもいます)

 

斬新は文脈に依存する


キュビズムの絵――その斬新さは「一点透視図法の否定」にあると書きましたが、非一点透視図法的な絵がそれまで無かったかというと、そんなことはありませんでした。
たとえば、遠近法が登場してくる前の時代の作品は、一点透視図法なんてまるで無視。大切なもの(たとえば神様とか)をでっかく描くなんてものもあります。

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マリア様とキリスト、スゲーでっかいですね。

 

キュビズムが斬新だとされたのは、「キチンとした一点透視図法、遠近法で書くのが当然だ!」という風潮や文脈があって、それに対して「こんなのはどうだろう」と提示したからでしょう。

 

斬新さは組み合わせひとつで現れる


「新ジャンル」という文化(?)を御存じでしょうか。
「新ジャンル」はにちゃんねるのSS(ショートストーリー/サイドストーリー/ショートショート)の界隈で流行った創作です。「ツンデレ」や「ヤンデレ」みたいなキャラクターの属性を色々考えて、SSを書こうと言うもので、「新ジャンル」の名の通り連日新しい、それこそ斬新な属性が考えだされました。

 

たとえば「ツンデレ」をさかさまにした属性として「素直クール」が考えだされ、そこから派生して「素直ヒート」や「素直シュール」なんかが考案されたのです。

 

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斬新なものを作り出すのに、一から自分で構築する必要はありません。
既にあるアイディア、その組み合わせを工夫するだけでOKです。
(もっとも、その斬新な組み合わせを考えるのも難しいのですが……)

 

まとめ

  • 斬新さは、全体の内ほんの少しでいい(全部斬新だと、他の人に受け入れてもらうのは難しい)。
  • 斬新さは、その文脈によって規定される。
  • 斬新さは、ゼロから作り出すのではなく、手持ちの素材、その組み合わせによって創り出すべし。

それでは良き執筆ライフを